ELSI

 [1]昨今話題となっている抗生物質が効かない多剤耐性菌の出現や毒素を生成する病原菌の蔓延は遺伝子の水平伝播によるところが大きい。遺伝子の水平伝播は細胞外のDNAを取り込むことであるから、各々取り込み対象となるDNAの産出や細胞外DNAの安定性、細菌によるDNAの取り込みについて考えれば良い。我々のハイドロゲルはゲルゾル転移する際にストランドを放出しているが、[2]細胞外のDNAの多くは水域生態系においては,DNase 等の細胞外酵素によって数時間から 1週間ほどで分解されているリンや 窒素が不足しがちな環境においては,細胞外 DNA の多くが栄養塩として生物に再利用されている が粘土粒子に吸着した DNA や,湖の底水層のように 水温の低い場所、土壌生態系において土壌中の粒子 に吸着した DNA は分解を受けにくいことが知られて いる。さらに野外環境中では人為的処理なしに細胞外よりDNAを取り込む細菌が多く存在しており、特に海水中ではそこから分離した細菌の1割強がこのような性質を保持していたという報告がある。そのため、in vitroでは廃液が先に挙げたような 分解されにくいような環境にたどり着いてしまった場合、細菌により取り込まれてしまう危険性がある。しかしながら、これは廃液の処理をきちんと行うことで防ぐことができる.しかし[3]in vivoでは日本人の腸内細菌が藻を分解する酵素を獲得した例もあるため注意しなければならない。

Reference

[1] Aminov, R. I. (2011) Horizontal gene exchange in envi- ronmental microbiota. Front. Microbiol., 2, doi:10.3389/fmicb.2011.00158.

[2]松井 一彰 (2015) 微生物生態系における細菌の遺伝子水平伝播現象 Jpn. J. Protozool. Vol. 48, No. 1, 2.

[3] Hehemann, J.-H.  et al. (2010)Nature 464, 908-912